なんで美術の試験があるの? 期末試験対策勉強会の雑談から


こんにちは。山﨑塾塾長の山﨑です。

2月16日(土)、塾生を対象とした期末試験対策勉強会を行いました。

今日はその勉強会の休憩時間に出た質問「なんで美術の試験があるの?絵をかければよくない?」について私のした雑談をブログにまとめます。

Q:なんで美術の試験があるの?絵をかければよくない?

そうだよねえ。なんか納得いかないよねえ。ぼくも昔、なんで美術に試験があるの?絵をかければよくない?って思ったし、音楽だって、なんで試験があるの?演奏できればよくない?って思ったよ。楽しいはずの美術や音楽も、テストがあるってだけでなんだか憂鬱だよね。

でも、それでも、実技試験以外の知識を伝える授業も必要だと思うし、その理解度を試す筆記試験も必要だと思うんだよね。今日はそのことについてぼくの考えを話すね。

視野を広げるヒントになればいいな。

さて、ぼくたちは、ものそのものを純粋に見ることは実はできないんだ。

かならず、ぼくたちの持っている知識や考え方、理論のようなものに基づいてものを見ている。たとえば教科書に書いてある文章ひとつとっても、それを読んで意味が分かるのは、小学校1年生のときから「ひらがな」「カタカナ」「漢字」を習って、その読み方と意味の勉強を積み重ねてきたからだよね。でも、文字の知識がなかったら、教科書に書かれているのは、ただのインクのシミにしか見えないと思うの。

ということは、文字の読み方という知識は、ぼくたちのものの見方を豊かにしてるってことにならないかな?教科書に書かれているのはインクのシミだとしか捉えられない人よりも、文章を読んで内容を読み取って、自分の知らない新しいことをどんどん吸収できたほうが絶対に楽しいよね!

これって、美術や音楽といった芸術の分野でもいえることなんじゃないかな?

「泉」

という芸術作品があるんですがね。これは、男性用小便器を倒しただけのものなんです。

え?これが芸術??って思いますよね。ぼくも思います。でもそれはぼくに、この芸術を解釈するだけの知識が欠けているだけなんだと思います。もしも芸術に関する深い知識があれば、「泉」も違った相貌を見せるでしょう。ぼくにはまだ便器にしか見えませんが(笑)

ピカソのキュビズムについて

ピカソという名前は聞いたことがあると思います。あの、いろんな視点が混ざり合ったような絵(キュビズム)を書く画家です。「ピカソ キュビズム」で検索すると、いろんな絵画を見ることができます。

さて、なぜピカソはこのような奇妙な絵を描いたのでしょうか。これには諸説ありますが、ぼくの好きな解釈を紹介しますね。

みなさん、テーブルの上にマグカップはありますでしょうか?べつに、醤油の瓶でも、筆箱でも炊飯器でも、バナナでもなんでもいいのですが・・・。

例えばマグカップを眺めますと、眺めているまさにそのとき、私に見えているのは、常に、マグカップの私に向けている側(表側)なのです。私が表側を見ているとき、まったく同時刻にマグカップの裏側を見ることは決してできません。

では、ぼくたちがマグカップを見ているとき、その裏側は存在しないのでしょうか?

いや、そんなことはないはずです。我々はマグカップに裏側があることを知っていますし、手に取って回してみれば、マグカップの裏側が、表側に、目に見える形で現われることを知っています。

ということは、ぼくたちは、マグカップを見るとき、暗黙のうちに、それを、今見ることはできないけど裏側のある存在(立体!)として見ていることになります。

さて、ところで何かを絵に描く場合、それはたいてい、誰かの視点から切り取られたものを絵に描くことになります。このとき、視点を固定したままだと、ものの裏側は決して絵に描くことはできないことに注意してください。従来の技法で、絵に描けるのは、カメラで撮った写真のように、ものの表側だけなのです。

でも、ピカソはそれで満足しなかったのだと思います。

ぼくたちが素朴に信じている立体というもの(表側だけではなく裏側の存在するもの)を、平面に絵という手法で、できるだけうつしとってやろう!

そのように考えて、キュビズムは生まれたのではないでしょうか。

そういえば、芸術ではなく、もっと実用的な工学の世界では、ものをつくるときの設計図を投影図という数学的な手法を用いて書きます。立体を、上から見た図(平面図)と正面から見た図(立面図、正面図)、そして横から見た図(側面図)で表現します。同時に3つの視点が存在する設計図は、ピカソのキュビズムとも通じるところがあって面白いですね。

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